洗濯機パンの基礎知識
分譲マンションを中心に今や当たり前の設備となった洗濯機パン、あなたのお家にもありませんか?
俗称で防水パンと呼ばれることもあります。
「洗濯機の水漏れを防ぐんでしょ?」とふんわり理解していても、洗濯機パンの重要性をキチンと理解できている方は少ないかもしれません。
主な目的は洗濯機付近からの漏水被害を防ぐためですが、その他にも様々な役割を期待されて設置されている設備です。
ここでは洗濯機パンと付帯設備についての基礎的な部分をお話していきたいと思います。
洗濯機パンの基本
「洗濯機パン」とは、主に洗面所に設置されている洗濯機からの漏水被害や排水管詰まりの際の漏水被害を防ぐための「受け皿」となる設備です。
特にマンションの場合は洗濯機の漏水でその部屋だけではなく階下の部屋にまで被害が及ぶ場合があります。
そういった被害を防ぐためにあらかじめ洗濯機パンを設置しているんですね。
洗濯機パンを設置する主な理由が漏水事故防止なのですが、その他にもいくつか設置するメリットがありますので、それについては次の項目でご説明します。
ちなみに洗濯機パンは「洗濯機パン」+「排水トラップ」という組み合わせて構成されているのをご存じですか?
また洗濯機を置く場所には「洗濯機用の水栓」と「コンセント」が必要になりますね。
それら一連の備えをして初めて「洗濯機置場」と呼べる状態になります
洗濯機パンの機能や役割
洗濯機パンの主な機能については起こり得るトラブル別に説明していきたいと思います。
●洗濯機の排水ホース外れ
洗濯機周辺で最も多い漏水トラブルで、最も注意が必要なトラブルですね。
洗濯機の排水ホースの先が洗濯機パンの内側にあれば、パンで水を受け排水トラップから排水します。
ごくまれに排水ホースの先が洗濯機パンの外に出てしまうケースがありますが、その場合は洗面所の床に漏水し、
マンションなどでは階下まで水が漏れてしまう恐れがある最悪のケースです。
排水ホースはしっかりと固定してあるか、洗濯機の運転や掃除のついでに確認する癖をつけましょう。
●洗濯機の排水ホース破れ
洗濯機の排水ホースは古くなるにつれて固くなり破けてしまうことがまれにあります。
排水ホースを洗濯機パン内側にきちんと納めておけば、破れた所から水が漏れてもパンで水を受け排水トラップ
から排水します。
気づきにくいトラブルですが、洗濯機パンが不自然に濡れていないかなどを定期的に確認しましょう。
●排水管や排水トラップの詰まり
床下などの排水管のどこかが詰まることによって排水トラップから水があふれでてくることがあります。
現在の全自動洗濯機では排水できていないとセンサーが感知すると自動的に排水を停止するようになっている
ものが多いため、詰まっている排水管にドンドン排水を出し続けることはないと思われます。
とはいえ多少の排水の逆流は考えられますので、その逆流排水をパンが一時的に滞留してくれます。
●給水ホース外れ
現在の洗濯機置場の給水栓には「緊急止水弁」という機能が付いており、蛇口が開いたまま給水ホースが外れても
水の供給を自動で停止してくれます。
ただ緊急止水弁付きの水栓が設置されていない住宅では洗濯機パンが一時的な漏水防止の役目を果たします。
あくまで一時的なもので給水ホース外れは蛇口を閉めるまで延々水が出続け、すぐにパンから水があふれますので、
できれば緊急止水弁の付いた水栓へあらかじめ交換しておいてもらう方が安心です。
また緊急止水弁付水栓が設置されている場合でも、しっかりホースが接続されているか定期的に確認しましょう。
このように漏水防止・防水に関する機能が洗濯機パンに求められる大きな機能ですが、その他に「防臭」、「防虫」という大きな役割もあります。
例えば戸建住宅では漏水しても他人に迷惑をかけることが少ないという理由で、1階洗面所の洗濯機置場であれば洗濯機パンが設置されていないというお宅が昔は多く見られました。
排水ホースの差し込み穴や接続エルボだけ設置されているところもあるのですが、そういった状態だとトラップの機能がないために、排水管の内部のにおいや虫が洗濯機内や洗面所へ上がってくる場合があります。
キッチン、浴室、洗面台、トイレなど、排水管が接続されているあらゆる設備には必ず排水トラップが設置され、そこに水を溜めて防臭と防虫のために「封水」という状態を意図的に作り出しているのですが、その機能を洗濯機置場にも実現できるのが「洗濯機パン」ということになります。
現在洗面所に洗濯機置場があるのに洗濯機パンが設置されていないという場合は、もう設置しない理由はありません。
浴室のリフォームと同時に洗濯機パンの新設をぜひおすすめします。
洗濯機置場のプランニングはとても大事
これまでお話してきたように「洗濯機パン(排水トラップとも)」+「洗濯機用給水栓」+「洗濯機用コンセント」が全て揃った状態が「洗濯機置場」という状態になります。
比較的軽視されがちな洗濯機置場ですが、大事な部分なのでリフォームする前に少し知っておいてほしいです。
いざ洗濯機を置こうと思ったら置けない…、使いにくい… といったことがなくなりますよ。
●設置予定の洗濯機のタイプとサイズ
洗濯機置場なので設置予定の洗濯機のタイプとサイズの把握から始めましょう。
洗濯機パンの大きさや洗濯機用水栓の高さ、コンセントの高さなどがそれで決まります。
特に最近のドラム式洗濯機などはサイズが大きく、重量は重くなってきています。
新築の場合はそれを見越してプランニングされていますが、特にリフォームの場合は注意が必要です。
↑日立 ビッグドラム 寸法図
●洗濯機パンは洗濯機より大きめか、かさ上げタイプを
洗濯機パンの排水トラップには洗濯機排水からでた糸くずなどが溜まっていきます。
くず取りネットやくず取り機能のある洗濯機がほとんどなので頻度は高くないですが、トラップの清掃は必須です。
洗濯機の下に排水トラップがくるような設置方法でも通常利用では問題ありません。
ただ掃除をしないと当然トラップが詰まるため、せっかくの洗濯機パンの意味がなくなってしまいます。
なので洗濯機をおろさずにトラップが掃除できる程度の大きさの洗濯機パンを選定するか、かさ上げタイプと
呼ばれるタイプの洗濯機パンを選定すれば、後のお手入れもずいぶん楽になります。
分譲マンション等では年に一回程度、管理組合から依頼された業者さんが排水管の高圧洗浄に来ますよね。
排水トラップの清掃は業者さんがしてくれますが、洗濯機の移動はお願いできません。
なので洗濯機を移動させなくても排水トラップにアプローチできるようにしておくことは非常に大切です。
●洗濯機周辺の収納はどうする?
洗濯機周辺にはタオルや着替え、掃除用具など置きたいものがたくさんありますよね。
ですので通信販売やホームセンター等でもよく販売されている組立式のランドリーラックのようなものを
お使いの方も多いと思います。
もしリフォーム後にそういった商品をお使いになる場合はあらかじめ選定しておいた方がよいですね。
一応洗濯機置場における洗濯機用水栓やコンセントの標準位置はぼんやり決まっているのですが、その通りに
設置すると、市販のランドリーラックが設置しづらいということが多くあるんですね。
あらかじめどういったものを設置するかがわかっていると、それに合わせて諸々の調整が可能になります。
↑アイリスオーヤマ製のランドリーラック
まとめ
洗濯機置場は洗面化粧台以上に洗面所の中でも地味な存在です。
ただ洗濯機の大型化により諸々の状況が変化してきていることをご理解いただければと思います。
また洗濯機パンの役割をもう少し詳しくご理解いただくことで、プランニングやメンテナンスの重要性への認識を深めていただければと思います。
特にマンションの場合、漏水事故のほとんどの原因はダントツで洗濯機まわりのトラブルです。
正しく使えばメリットばかりの設備なので、普段気にもされない洗濯機パンですが、今日だけでもいいです、ちょっとだけ気にしてあげてくださいね。