ユニットバスのよさ
1.漏水リスクの低減
ユニットバス(システムバス)の最大の利点は「漏水リスク軽減」です。
従来のタイルやモルタルで作る「在来工法」では年数が経ってくると必ずといっていいほどタイル目地・ドアまわり・浴槽とタイルの隙間などからの漏水が始まります。
タイル目地は家の振動や経年劣化で隙間が空いたりしますし、タイル目地自体が濡れたり乾いたりすることで石灰などの含有成分が溶け出して徐々に弱っていきます。
またドア周りや浴槽周りは熱による膨張率が違う素材が接しているところであることと、ドアの開け閉めや浴槽への出入りの振動などの影響で隙間が空く可能性が高くなります。
(浴槽周りやドア周りをコーキングしてあるのは違う膨張率に追従しつつ止水するためです)
そのため必ず床タイルと壁タイルの裏に防水層が施してあるのですが、実際はその防水層の隙間や傷んだ箇所を通り越して、見えないところで水漏れをおこしてしまっているところがホントに多くみられます。
特に水には狭いところへ入っていこうとする性質があり、それらは「毛細管現象」と呼ばれます。
タオルの端だけ水についている状態でもいずれタオル全体に水がいきわたってしまったり、夏に氷を入れたグラスを持ち上げてもいないのに、グラスの底全体がびちゃびちゃになったりするのも同じ現象です。
メモ用紙一枚が入るか入らないかほどの隙間でも水気が侵入するには十分な隙間です。
一戸建てであれば土台や柱を傷めてしまっていたり、カビやシロアリの原因を作ってしまっているケースもありますし、マンションであれば階下に人知れず漏水してしまったりするケースがあります。
ドアとタイルの隙間から水が漏れて・・・ 知らぬ間に家を傷めてしまいます
かつてのほとんどの住宅で浴室を1階に設置することが常識とされていたのは、万一漏水がおきてもできるだけ住居の構造部に被害を拡大させにくくするためだと考えられています。
言い換えればそれだけ漏水のリスクが多くあったことを意味しています。
よくよく考えてみれば、住宅のなかでも年間を通して毎日大量の水に濡れる場所は浴室以外にないのですから、リスクが高いのは当然といえば当然といえるかも知れません。
こういった「浴室は漏れてやむなし」という概念を取り払ったのがユニットバスなのです。
ユニットバスは床になる防水パンそのものが水槽のようなつなぎ目のない形状になっており、床そのものが経年劣化で破損することは極めてまれです。
ユニットバスの浴槽や床の材質と、ボートや小型船の材質がほぼ同じといえばイメージしやすいでしょうか?
そういった一体成型された床と二重三重の漏水対策のための様々な構造によって、外部に水を漏らさない仕組みになっているのがユニットバスなのです。
そのためマンションや一戸建ての2階以上の階にも安心して浴室を設置することが可能になったのです。
もちろんユニットバスも半永久的に使えるわけではありませんが、経年劣化による漏水のリスクはタイルのお風呂に比べるとはるかに少ない浴室といえるでしょう。
2.工期短縮
ユニットバスのもう一つの大きな利点は「工期短縮」です。
「工期短縮」というと工事をする業者側にとって都合がいいだけだと思われがちですがとんでもない。
工事を依頼する施主さま側にもとても大きなメリットがあるんです。
まず従来のタイルやモルタルで作る「在来工法」では別名「湿式工法」と呼ばれ「塗って乾かす」という作業の繰り返しでした。
モルタル・防水・タイル目地・塗装・コーキング等々・・・。
一工程終わるごとに乾燥を待つ必要があるため、ユニットバスと比較して実に約2~3倍ほどの工期が必要でした。
そのためリフォーム中で浴室を使えないという期間も長く、またさまざまな職種の職人が必要なため狭い空間でありながらコストがどうしても割高になってしまいがちでした。
ですがユニットバスの組立工事は乾燥待ちなどの日数が必要のない「ほぼ乾式工法」です。
(最終のコーキングの乾燥待ちの時間はどうしても必要です)
なので、リフォームの工期は約3~5日ですが浴室を使えない日は約2~3日、工事費で多くの割合を占めた職人の数も激減し、工期短縮がそのままコスト削減にもつながったのです。
工期短縮は業者や施主さまだけでなくご近所の皆さんにとってもうれしいことですよね。
3.暖かさ
ほとんどのお客様がユニットバスを選ばれる理由に「暖かさ」を挙げられます。
「タイルのお風呂は冷たくて寒い」というのは今や多くの方が知るところとなりました。
構造的に考えるとタイルで作る在来工法のほうがガッチリしていて、ユニットバスのほうがペラペラのイメージなので、それほど差が出るように思わないのですが、体感的にはやっぱりユニットバスのほうが暖かいです。
これは浴室の構造と素材の違いに原因があると思われます。
在来工法は家の躯体と一体となった工法なので、外気の影響を直接受けます。
外の寒さが床下や外壁から伝って、しっかりと中のタイルにまで伝わってくるものと考えられます。
一方ユニットバスは家の躯体とは完全に別構造になっているため、外壁や床の土間などから伝わる寒さが直接浴室に伝わりにくい構造になっています。
また在来工法に使われるモルタルやタイルは「温まりにくく冷めにくい」という特性を持っているのに対し、ユニットバスに使われる樹脂や壁パネルは「温まりやすく冷めやすい」という特性を持っています。
入浴は長くてもだいたい1時間程度、早い人なら10分程度で済んでしまいますので、ユニットバスの素材のほうが用途に適しているといえます。
ユニットバスも決して冷たくないわけではないのですが、そういった理由からタイルの浴室と比較すると「暖かい」と感じる人が圧倒的に多いようです。
タイルのお風呂の冷たさは体の芯までキンキンに冷えますもんね。
また最近では浴室の窓をペアガラスのものに変更したり、浴槽だけでなく浴室全体を断熱保温するオプションや浴乾・暖房機等がオプション設置できたりと、ますます浴室内の暖かさを保つことができるようになっています。
ちなみに毎年冬になると注意喚起がされる「ヒートショック」とは、脱衣場と浴室の寒暖差による血圧の変動が体に悪影響を及ぼすという症状です。
まれにヒートショック対策で浴室内だけ暖房をガンガンにお使いになる方がおられますが、これは必ずしも正解ではありません。
ヒートショック対策は「浴室だけを暖める」ことではなく「脱衣場と浴室の温度差をできるだけ少なくする」ことが大切ですので、ゆめゆめお間違いのないようにしてくださいね。
4.掃除のしやすさ
「暖かさ」とともにお客様がユニットバスを選ばれる理由として多いのが「掃除のしやすさ」です。
特に最近のユニットバスはコーキング目地が少なくなっていたり、掃除のしやすい排水口やドア形状になってきているので、ますます掃除がしやすくなっています。
在来工法の浴室は「とにかくタイルの目地の掃除が大変!」というお客様がとても多く、実際にカビ汚れなどでお困りの方はユニットバスにすると圧倒的に掃除が楽になります。
ただユニットバスも掃除をしなくていいというわけではありません。
ユニットバスになると掃除する場所や掃除の仕方が変わることを覚えておいてください。
【排水口周り】
戸建住宅の在来浴室の場合、構造上の理由から排水口のお手入れはそれほどデリケートになる必要はありませんでした。
排水口の網の目も大きく髪の毛などもあまり詰まらない構造になっています。
(ただし家の外の排水マスなどは定期的に掃除をする必要がありますが)
しかしユニットバスの場合、排水口の詰まりは命取りになります。
詰まってあふれ出た排水が洗面所に流れ出したりすることさえあるのです。
そのためどのユニットバスも排水口には髪の毛などのゴミを受け止める機能がついていますが、そのゴミを頻繁に取り除く必要があります。
(代わりに屋外の排水マス等にゴミが出にくくなっています)
また定期的に排水トラップの内部も掃除してあげると快適に入浴できます。
【床】
ユニットバスの床はしっかり換気をしていれば床面自体に黒カビが生えることはあまりありません。
ですが汚れは必ず付きますので定期的に掃除が必要です。
特にTOTOの「カラリ床」に代表されるような速乾性の床は、床面全体に防滑兼排水用の溝が成型されていますが、掃除をせずに放っておくとその溝の中に皮脂などの汚れがたまって「赤やピンクっぽい色」になってきます。
当然床と壁の取り合いの部分にあるコーキングは掃除をしないとカビが生えます。
その床の溝も最低一週間に一度程度は柔らかいブラシなどで丁寧に掃除するといいでしょう。
【コーキング周り】
在来工法ほどではありませんが、ユニットバスもちゃんと掃除と換気をしないとコーキングの部分にカビが生えることがあります。
日ごろから換気と掃除をしていればあまり心配はないのですが、取れないカビが生えてしまったら在来工法の時と同様にカビ取り剤やコーキングの打ち替えをする必要があります。
カビ取り剤の成分によってはユニットバスの素材に合わないものもありますので、説明書をよく読みそういう薬品を使う際は注意してくださいね。
これだけ注意していればユニットバスは実に快適です。
「ユニットバスにすると掃除をしなくていい」のではなく、「掃除がより簡単になる」、「掃除の仕方が変わる」、「掃除に力がいらなくなる」というふうに認識しておいてください。
今まで在来工法の浴室をお使いの方にとっては、タイル目地のカビ取りやゴシゴシ洗いとサヨナラできるだけでも十分に楽ですよね。
5.シロアリ対策
戸建1階の在来工法の浴室にはシロアリが住みやすい環境が整っています。
洗い場のタイルの下は土が詰まっており、タイル目地の隙間からしみ込んだ水で年中湿っています。
また浴槽の下は排水を流す土間などになっており、古い土間に染み込んだ水気はなかなか乾きません。
タイル目地も土間もセメントが原料ですので、年数が経ってくると石灰成分が抜け水分を含んだり通してしまいます。
ひどい場合は壁の木材も湿気でフニャフニャになっていることも…。
一般的にシロアリは暗く湿った暖かい場所を好みますので、在来工法浴室の床下やその周辺は年中全ての条件を満たしてしまっています。
シロアリは日本全国いたるところに生息しているので被害から100%逃れるのは至難の業ですが、浴室をユニットバスにすることでシロアリが住みにくい環境にすることができます。
ユニットバスの場合は平らなコンクリート土間の上にボルト脚で設置する形となり、床下や壁裏、天井裏に空気が流れる空間ができます。
また排水は排水管を通して直接外部へ排出するので、床下の空間に湿気を発生させることはまれです。
厳密にいうと結露による湿気等は多少発生しますが入浴の際に利用する水を直接床下等に流出させないため、年中湿っているという状況は避けることができます。
もちろんユニットバスの壁も大きな一枚物の鋼板等を止水処理して組み上げていますので、そこから水気が染み出すこともありません。
実際に工事をしていても在来工法浴室にはかなりの高確率でシロアリの蟻道が見つかりますが、もともとユニットバスだったお宅ではほとんど見ることはありません。
シロアリの発生は家の立地などの周辺環境にもよりますが、まず見えない部分も含めた家の中の環境を整えることがシロアリ対策に効果的だと考えられます。